物作りの魔術師-オジー師匠
小学校低学年の頃、私たち少年にとって憧れのアイテムがありました。
それは上級生たちが持っている銀ピカの三徳ナイフです。
ナイフ、カマ、のこぎりの3種類の刃がついていて、山川に入って物を作り、遊ぶ際の必須アイテムです。
釣り用のうきや竹竿、竹鉄砲、竹馬、パチンコ、輪ゴム拳銃、ミニカー等々どんな道具、おもちゃでも作れます。
物のない時代、少年たちにとって喉から手が出るほど欲しい魔法のアイテムです。
でも当時の値段で25セント。
私たちのような小学1、2年生が簡単に手の届くような品物ではありませんでした。
すべての家庭が貧しかったあの時代、子供心にも両親にお願いすることもできません。
でも欲しいのです。
あらゆることを考え実行しました。
くず鉄を1キログラム集めて売れば1セント、いただいたバス賃を使わず5、6キロの道のりを歩いて2セント、隣の風呂屋の掃除を手伝って3セント、ミッキージュースを買うためのお小遣いを使わず1セント等々……。
25セント貯めるのに必死でした。
一番良かったのはくず鉄集めです。
わが家の1、2軒両隣は風呂屋さんで多くの廃材を薪として燃やしていました。
その廃材にはたくさんの鉄釘がついているのです。
オーナーのオジーやオバーに了承をいただいて古釘集めに大張り切りです。
他の方法より時間と労力がかかりますが、確実にお金が貯まります。
やっと25セントが貯まった時には、胸もはち切れんばかりの喜びです。
実際にナイフを購入して手に持った時には、本当に手が震えました。
その後、父に弟子入りして様々な指示を仰ぎながら、肌身離さず持ち歩いたそのナイフで様々な遊び道具を作りました。
父は本当に手先の器用な魔術師のような師匠でした。
どんな物でも工夫して作りました。
そしてその作り方を優しく教えてくれました。
幼かった私は、両手指に20数カ所もの切り傷跡を作りましたが、手先の器用さは増し加わりました。
手指の切り傷を見るたびに、父との懐かしい思い出の数々が温かく蘇ってきます。
貧しさゆえに得られた貴重な体験と喜び、そして温かな思い出です。
今ではオジーになった父が、最近孫たちのために下駄を作ってくれました。
年のせいか、あの頃の精彩は多少欠くものの、杉の香りがほのかに香るしっかりとした下駄です。
華緒も手作りです。
孫たちは本当に大喜びです。
どんなに走り回っても壊れることはありません。
「物作りの魔術師」健在という感じです。
オジーは、その孫たちの下駄の音とほのかに香る杉の香りに目を細め、本当にいい顔をしていました。
「愛孫の ひとりひとりに 下駄作り 香音楽しむ 笑顔のオジー」
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はじめまして。
とても心を打つ記事の数々、拝見しました。
子供が欲しがるものをそのまま与えるよりも、
自分で手に入れるために工夫させること。
実際に体験させることが大事なのですね。
私には子供時代、自分で稼いだお金で欲しいものを買う、というエキサイティングな経験は、残念ながらありません。
でも、できるなら息子にはいろいろな成功体験をして欲しいな、と思います。
投稿: えま | 2006年6月26日 (月) 22時24分